薬で治る?対人恐怖症の薬物治療について

薬で治る?対人恐怖症の薬物治療について

1.対人恐怖症とは

対人恐怖症とは、恐怖症性障害という大きな括りの病気の中の、1つの症状としてあげられるものです。ある特定の状況や対象に過度な恐怖を感じ、その恐怖によって生活や精神状態に支障が生じてしまう病気の総称を恐怖症性障害と呼びます。その中でも比較的有名な対人恐怖症は、人とのコミュニケーションや社交の際に恐怖を感じる症状です。さらにその中でもおおよそ2パターンに別れ、スピーチ恐怖、電話恐怖、会食恐怖など「特定の社会的状況に対する恐怖」と、視線恐怖、自己臭恐怖、醜形恐怖など「自分の要素が他人に不快な印象を与えてしまう」という「自己に対する恐怖」があります。

2.対人恐怖症の治療について

薬で治る?対人恐怖症の薬物治療について
対人恐怖症には、恐怖を感じる脳のメカニズムに応じて克服のために有効な精神療法や薬での治療を行います。人によって時間はかかりますが、専門家の指導の下で薬物治療を行い、恐怖に慣れていくようにすると、克服までは行かない場合もあれど上手く付き合って生活ができる範囲に落ち着いていきます。

しかしながら、対人恐怖症が強迫性障害や妄想性障害などに結びついてしまっている場合の治療は難しく、さらに恐怖の対象が現実離れして重度になると本格的な精神病としての治療が必要になることもあります。基本的な恐怖への治療法は、薬物療法で体にアプローチする方法と精神療法で恐怖の記憶を塗り替えていく手法を併用して行います。また、状況にもよりますが苦手な状況の時だけ薬でやり過ごす、といった薬との付き合い方も可能です。

3.対人恐怖症の薬について

脳が恐怖を感じる時、「偏桃体」という部分が敏感に働いています。この部分が過敏になると恐怖を感じやすくなるのです。ここに薬でアプローチし、恐怖を和らげるのが薬物治療です。恐怖に対して使われる薬は主に2つ、抗うつ剤(SSRIが中心)と抗不安薬です。

抗うつ剤のSSRIは、脳内のセロトニンという物質を増やす薬です。セロトニンには偏桃体の活動を活発にするグルタミン酸神経の活動を抑える働きがあります。恐怖を生み出す偏桃体の働きを抑制し、恐怖や不安と、からだの交感神経の過度な緊張を緩和させることができるのです。しかし抗うつ剤の弱点は即効性に乏しいことです。効果が出てくるまでに時間がかかってしまうため、恐怖を速やかに抑える即効性の薬も補助として使います。それが抗不安薬です。抗不安薬は偏桃体に作用するわけではなく、リラックスに関わるGABAの作用を強めて脳の活動を全体的に抑える働きがあります。

もしも恐怖を感じたときだけ薬でやり過ごす、といった方法を選ぶのであれば症状が出た時だけ抗不安薬を使用するというのも手です。抗不安薬だけでなく、βブロッカー(ふるえ止め)や抗コリン薬(発汗止め)なども症状に合わせて使い、日常生活を送れるよう治療していきます。